後見人の取消権 法定後見と任意後見での違い

① はじめに:取消権とは何か?

「取消権」とは、すでに行われた法律行為(契約など)を後から取り消すことができる権利です。後見制度に関することでいえば、判断能力が不十分な被後見人(後見制度を利用している人)が結んだ契約を、後見人が後から取り消せる制度上の救済機能です。

② 法定後見人に認められている取消権

法定後見制度の後見人には、本人の法律行為を取り消すことができる「取消権」が認められています

これは、法定後見が本人の判断能力が低下した後に動き出す制度であり、本人の利益保護を優先するために後見人に強い権限が与えられているためです。

③ 任意後見人には取消権がない

一方、任意後見制度では、本人の判断能力が十分なうちに後見契約を結びます。

そして任意後見では本人の意思の尊重が重要視されます。任意後見人に取消権が与えられると、本人が望んだ契約を後見人によって取り消されてしまうリスクがあります。

したがって任意後見人には、本人のされた契約を後から取り消す取消権が認められていません

④ 取消権の有無による制度の違いまとめ

法定後見制度任意後見制度
手続の開始時期本人の判断能力が低下した状態で申し立て手続を開始本人の判断能力がある状態で公正証書で任意後見契約を締結
取消権あり(日用品の購入等は不可)なし
代理権包括的な代理権あり契約で定めた範囲に限定

⑤ 任意後見で取消が必要になったら?

任意後見の被後見人が不利益な契約をしてしまった場合、任意後見人には取消権がありませんが、以下のような手段が考えられます。

  • クーリングオフ制度や消費者契約法による取消を本人の代理として行使する(詐欺・脅迫などに該当する場合)
  • 家庭裁判所に改めて申し立てをして法定後見への移行を検討する

繰り返しになりますが、任意後見は本人の意思が尊重されます。任意後見から法定後見に移行するには、取消権がないと本人の権利が守れないなど、家庭裁判所が「特に必要がある」と認める必要があります。

⑥ まとめ

法定後見人には取消権があり、判断能力が低下した後の本人を強く保護できます。一方、任意後見人には取消権がないため、本人の自己決定を重視した柔軟な支援が可能です。

法定後見と任意後見は、どちらが良い悪いというものではありません。ご本人の意思や判断能力等を踏まえて、どちらが適しているかを判断するものです。

当事務所では長年成年後見制度に関わってきた有資格者が、あなたからのご相談に応じます。どんな質問でも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。