銀行の代理人カードと成年後見制度を徹底比較

 先日、歌手の橋幸夫さんがアルツハイマー型認知症であることを公表されました。そして厚生労働省の報告によれば、80歳代後半になると男性の35%、女性の44%は認知症であるといわれています。男女ともに平均寿命が80歳を超えている日本。もはや認知症は特別なことではなく、誰もが当事者となりうる当たり前のことなのです。
 認知症と聞いて、やはり心配になるのが財産の管理。5月22日付の読売新聞に「銀行口座の「代理人カード」名義人の判断能力 発行条件」という記事がありました。今日はこの代理人カードと成年後見制度について解説します。

代理人カード
【概要】
 口座名義人の代わりに、家族などが現金の引き出しや預け入れなどを行うことができます。3大メガバンクやゆうちょ銀行で作ることができます。

【メリット】
・手続きが比較的簡単で、即日発行されるケースもあり
・手数料が無料または低額

【デメリット】
・口座名義人の意思決定能力が失われた状態では作成できない
・金融機関によって、発行の条件や代理人の範囲が異なる
・利用できるのはカードを作成した銀行のみ
・代理人の不正を防ぐ手段が不十分

【適しているケース】
 口座名義人の判断能力が比較的しっかりしており、日常的な預貯金の出し入れを補助したい場合。

成年後見制度

【概要】
 判断能力が不十分な方々を法律的に保護し、支援する制度です。家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人等が選任されます。

【メリット】
・口座名義人の意思決定能力が失われた状態で手続き可能
・法的根拠に基づくので、さまざまな機関に対して有効
・家庭裁判所や後見監督人による不正防止の手段がある

【デメリット】
・申し立てから後見人選任まで時間がかかる
・制度が複雑で専門家の関与が必要
・後見人は家庭裁判所が選任するため、親族以外の第三者が就任することがある

【適しているケース】
 口座名義人の判断能力が低下し、財産管理や契約行為を自分で行うことが困難な場合や、多額の財産があり専門的な管理が必要な場合や、詐欺被害などが懸念される場合など。

 ここまで見てきたように、どちらの仕組みもメリット・デメリットがあります。一概にどちらが良いとは言えず、まさにケースバイケースです。私は長年、地域包括支援センターで認知症の方とそのご家族を支援してきましたが、その経験を踏まえて以下のような対応をお勧めいたします。

お金の問題はセンシティブ
 たとえ親子とはいえ、お金のことはお互いに知られたくないというのが当然です。お子さんから見ると、高齢になって出来ないことが増えてきた親のことが心配になる気持ちはよく分かりますが、いきなりお金の問題に触れることはNGです。
 まずは見守りやサポートに徹することが大切です。万が一の場合に親御さん自身がどのようにしたいのかの考えを聞いたり、詐欺被害への注意喚起をしたり、お互いに過度の負担がなく、気持ちよく動ける関係づくりを心掛けてください。

早期の対策が重要
 一方で判断能力の低下は、ある日突然始まるわけではありません。少しずつ進行していくことがほとんどです。異変を感じたら、できるだけ早く対策を始めることが重要です。
 そして自分ひとりで何とかしようとしないでください。家族や知人、行政や地域包括支援センターなどの公的機関、そして当事務所のような専門家にどんどん相談しましょう。

 認知症と財産管理というデリケートな問題に直面した時、不安は尽きないことでしょう。しかし、適切な知識を持ち、早めに対策を講じることで、ご本人にとってもご家族にとっても安心な未来を築くことができます。
 当事務所では、高齢者の財産管理に関するご相談を承っております。一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。状況に合わせた最適なサポート方法を一緒に考えていきましょう。