「認知症かもしれないけど病院に行ってくれない」場合の対応

 私が地域包括支援センターで働いていた時によく受けた相談が、「私の親なんですが、最近物忘れが目立ってきて認知症かな?と思うんですけど、本人は『私は大丈夫』と言って病院に行ってくれないんです」というものです。
 ご家族からすれば「詐欺被害にあったら大変」「火の不始末で火事になったら」など気になることがたくさんありますよね。さらには早めに受診して治療を受ければ認知症の進行も遅らせることができるのでは、と考えるのも当然です。一方、ご本人からすれば「まだまだ自分はしっかりしているのに、うちの子は余計な心配ばかりして」と思うのもこれまた当然です。
 このような時、ご家族が無理に病院に連れて行こうとしても、うまくいくことはほとんどありません。いったん「受診させる」という考えを置いて、かかわり方を見直してみることをお勧めします。

 ここで大切なポイントを3つお伝えします。
 1つめは「あえて距離をおく」ことです。人間は誰でも加齢に伴って身体機能や認知機能は低下していきます。そのことを前提に、最近の変化が認知症によるものなのか、自然なことなのか、身近なご家族が客観的に状況を確認してみて下さい。
 できないことや忘れてしまうことがあっても、ご本人なりに対応ができているのであれば、それほど心配はないことが多いです。一方で、火の不始末や通信販売で高額な商品を何度も注文するなど、生命や身体、財産に著しい影響が及ぶ可能性があるときは、早急に専門的なサポートを受ける必要があります。
 2つめは「人に頼る」ということです。逆に「一人で何とかしなければならない」という考えは持たないでください。もしもご本人が認知症だった場合、認知症介護は数年にわたることも珍しくありません。あなた以外のご家族や知人、近所の方、さらには医療・介護・福祉など様々な専門家のサポートを利用しつつ、「頑張らない介護」をしていくためには、スタートから良い意味で「周りを巻き込む」考えを持つことが重要です。
 3つ目は「焦らない」ことです。この「受診しない問題」に限らず、ご本人とご家族の意向が合わない場合、短時間で問題が解決することはほとんどありません。「いずれ時間が解決してくれる」くらいの気持ちでゆとりをもって取り組みましょう。
 いくら「焦らない」と言われても、目の前で自分の親が認知症かもしれない状況にあると「そうは言っていられない」という方も多いですよね。ここでも1つめの「あえて距離をおく」ことと2つめの「人に頼る」ということが大切です。「急いては事を仕損じる」ということわざもあります。常に自分の心にゆとりを持つように心がけましょう。

 なお、当然ですが「認知症かどうか」の判断は医師でないとできません。ですので医療機関の受診は避けて通れない問題ですが、それも「あえて距離をおく」「人に頼る」「焦らない」ことで必ず実現できます。
 当事務所ではこうした高齢者の方に関するご相談もお受けしております。ぜひお気軽にご相談いただき、一緒に悩みを解決していきましょう。