高齢者施設での虐待報道に思うこと
三重県にある特養ホームで、職員が入居者に対して威圧的な発言をしたり髪を引っ張るという虐待行為があったとの報道がありました。また、福島県の有料老人ホームでは、職員が入所者の現金を盗む経済的虐待があったとの報道もありました。
これらの行為が許されないのは言うまでもありませんが、ただ非難するだけでは問題の解決はできません。
今回は、自治体の職員として高齢者虐待対応に関わってきた経験をもとに、これらの報道に対して思うことをまとめてみました。
なぜ虐待は起こるのか?
この問いに明確な答えを出すことはできませんが、確実に言えるのは「虐待の原因はひとつではない」ということです。考えられる要因を挙げてみます。
- 職務上のストレス
- 認知症や高齢者の特性に対する理解不足
- 法人の虐待防止への取り組みの不足
- 職場の環境(働きやすさ、相談のしやすさ)
- 処遇(給与や休暇など)への不満
- 利用者側の過剰な要求
- 自治体の支援体制の不足
- 職員個人の資質的問題
ここに挙げたことはほんの一部です。このほかにも様々な要因が絡み合って、結果的に「虐待」として表面に現れてきてしまったのが今回の報道にあったような行為ではないでしょうか。
どうすれば虐待は防げるのか?
これも難しい問いですが、そもそもほとんどの施設では虐待は起きていません。ただし、「虐待の芽」がないかというと、それは別の話です。
「虐待の芽」とは、冒頭に挙げた暴力的な行為や金銭の搾取など、実際に利用者に被害が及ぶまでには至らないものの、その一歩手前の状態のことを言います。
先ほども述べたように「虐待」は表面に現れてきた状態ですが、表面に現れない「虐待の芽」はおそらく全ての施設にあるのではないでしょうか。
職員自身や施設長などの管理層、そして運営法人などがこの「虐待の芽」にいち早く気が付き、表面に現れる前に摘み取ることができるか。そのために自治体や関係する機関が支援する体制を築けるか、これが虐待防止の取り組みを進めるうえで最重要だと考えます。
介護現場の現状を考える
とはいえ、介護現場は慢性的な人手不足に悩まされ、虐待予防の取り組みまで十分に手が回らないというのが現状です。
外国人人材の活用やICT化、ロボットの導入など様々な施策が行われていますが、増え続ける要介護高齢者に対応できているとは言い難いでしょう。
この状態を一気に解決する魔法はありませんが、今回のような虐待報道をきっかけに「なぜ虐待が起こるのだろう?」「背景にはどんな問題があるんだろう?」と考える人が一人でも増えることが、結果的に「虐待の芽」を摘むことにつながってくると思います。
「介護」に関係ない人はいない
「最大の罪は無関心」という言葉がありますが、介護はすべての人に関係のあることです。親の介護をすることもあるでしょうし、自分自身が年老いて介護を必要とすることもあるでしょう。介護は決して一部の介護職員、介護が必要な高齢者だけの問題ではありません。
ところが、高齢化+核家族が当たり前の現代では、親の介護に直面するのは子が50~60歳代になってからというのも珍しくありません。これではなかなか介護現場の実情に関心を持つことも難しいかもしれません。
私たち介護や福祉の現場に関わる者としては、こうした関心がない人たちに向けた情報発信をしていくことも重要ではないでしょうか。
当ブログでは、今後もこのような情報発信をしていきたいと考えています。


