漠然とした将来への不安を解消する方法は?
人間だれしも不安の1つや2つはあるものです。しかし、何も準備をしていないと、いざという時に自分の思いとは裏腹に、法律に規定されたルールに縛られてしまうこともあります。今回は以前に私が関わったケースをもとに、ある事例をご紹介します。
親族の状況
ご相談いただいたのは60代の女性の方。仮に「Aさん」とします。ご両親はすでにお亡くなりになり、お一人暮らしをされています。
兄が1人いて、兄には社会人の娘(Aさんからみた姪)が1人います。Aさんは姪を実の娘のようにかわいがっており、姪もAさんのことを慕っているそうです。
以前はAさんと兄の関係も良かったのですが、5年前にお母さんが亡くなったときに相続のことでもめてしまい、それ以降はほぼ断絶状態になってしまったそうです。
しかしAさんと姪は一緒に食事をしたり、仕事の悩み相談に乗ったりと、良好な関係を継続しているとのことでした。
相談の内容
Aさんは健康そのものですが、60代になり自分の老後が気になり始めました。ある程度の資産があり経済的な不安はありませんが、「介護が必要になったら」「認知症になったら」「自分が死んでしまったら」どうすればいいのか気になって落ち着かなくなってしまいました。
そんなときにふと浮かんだのが姪の顔です。兄には今さら頼むこともできないし、順番的には兄が先に亡くなってしまう可能性が高い。でも、姪になら頼めるかもしれない。
ただ、今までかわいがっていた姪に迷惑をかけるようなことはしたくない。知り合いに話を聞いたり、インターネットで調べたりしたけれど、納得できる答えが見つからない。そんな状態でご相談いただきました。
Aさんの希望
Aさんのお話しを伺うと、Aさんのご希望は次の2点であることが分かりました。
- 自分の財産は姪に残したい
- 姪に迷惑をかけず安心して最期まで暮らしたい
このご希望を叶えるために「遺言書の作成」と「任意後見契約の締結」をお勧めしました。
なぜ遺言書が必要なのか?
遺言書がない場合、残された財産は「法定相続人」が受け取ることになります。Aさんの場合、配偶者と子はおらず両親も亡くなっているため、兄が法定相続人となります。
Aさんよりも先に兄が亡くなっていた場合は姪が相続人となりますが、どちらが先に亡くなるかは誰にも分かりません。Aさんの思いを確実に実現するためには、遺言書で「財産を姪に残す」ことを明確にする必要があるのです。
配偶者や子などには「遺留分」があり、「財産を姪に残す」という遺言書を作っていても、配偶者や子がいた場合は自分の遺留分を請求する権利がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、兄から「遺産をよこせ!」と言われる心配もありません。
なぜ任意後見契約が必要なのか?
将来認知症になったとしても、「親戚が面倒を見てくれるでしょ?」「行政がなんとかしてくれるでしょ?」「介護の人が手続きしてくれるでしょ?」と楽観的に考えている方が一定数いらっしゃいます。
もちろん親戚が献身的に支えてくれる場合も、行政や福祉・介護の支援者などがサポートしてくれる場合もありますが、過度の期待は禁物です。
親戚の場合は扶養義務があったとしても、その人ができる範囲ですればよく、基本的には善意によるものでしかありません。行政等のサポートも法律や制度に定められた範囲ですので、必要十分なサポートが受けられるとは限りません。
その点、任意後見契約を締結しておけば、誰に後見人をお願いするか、何を後見人にお願いするか、元気な今のうちに決めることができるので安心です。
任意後見については「任意後見は万が一に備えるための保険?」の記事も是非参考にしてください。
まとめ
最終的にAさんは姪とも相談をして、全財産を姪に相続させる内容の公正証書遺言を作成し、後見活動を行っている法人を任意後見受任者とする任意後見契約を締結しました。
Aさんは今も元気に暮らしており、遺言書も任意後見も実際に役立つことになるのはまだまだ先のことですが、この2つがあることで今までの不安が解消できたとのことでした。
将来の不安は誰にもつきものです。しかし、備えることでその不安を軽くすることができます。悩んでも解決しないときには、専門家に相談することで解決する場合もあります。当事務所ではお客様に寄り添い、不安の解消のお手伝いをいたします。お気軽にご相談ください。



